「営業改革」の記事一覧
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連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.5
使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」前回 考察した「営業組織の規模によるSFA導入率の違い」のグラフでは、51名以上の営業組織の「使いこなせていない」率が約半数であることを指摘しました。Excelの案件管理が破綻を迎えSFAを導入したものの使いこなせていない。では、いったい使いこなせていない理由はどういったところにあるのでしょうか?こちらのグラフは51名以上の営業組織のかたの「現在の営業の活動管理、顧客管理、案件管理方法についてお聞かせください」の回答で「(自社開発を含む)SFAで管理している」と回答した383名、「(自社開発を含む)SFAを使いこなせていない」と回答した272名、「Excel・日報・グループウェアで管理している」と回答した222名が「筋肉質な営業組織を作るために、貴社が課題として考えていることを記述してください。」の問いに対してどのように回答したか比較したグラフです。こちらを見ると一目瞭然です。SFAで管理している営業組織と使いこなせていないと感じている組織で大きく差がついているところと、そうでないところがあります。わかりやすく差分が大きい順番に並び替えてみました。「管理している」グループと「使いこなせていない」とグループの差 ・営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない:21.22ポイント ・営業データ全般の分析ができていない:19.23ポイント ・営業活動の可視化や活動内容のコーチングができていない:17.36ポイント ・顧客情報の収集・管理ができていない:12.59ポイント ・資料・見積作成の効率化ができていない:11.74ポイント ・顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない: 9.72ポイント ・データを元にした行動の改善を行う風土・カルチャーがない: 9.52ポイント ・営業部門内で提案書などのノウハウの共有ができていない:5.50ポイント ・現場の改革に対する抵抗感が根強い:3.76ポイント ・ワークスタイル自由度の向上(モバイルなど):1.92ポイント ・部門をまたがった情報共有とコラボレーションができていない:0.29ポイントSFAを導入したが使いこなせていないと感じる理由は、案件や活動の可視化ができておらず、パイプライン管理や活動内容のコーチングにつなげられていないところにあります。ある意味、SFAの最も基本的な機能である案件管理と活動管理ができておらず、基礎情報の収集段階でつまずいているのが使いこなせていないと感じる一番の原因のようです。逆にワークスタイルや部門をまたがったコラボレーションに関しては、ほとんど差がついていません。そして、「顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない」や「営業活動の可視化や活動内容のコーチングができていない」に関しては、「管理している」と答えた企業でもまだ強く課題に感じていると思われます。著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)セールスフォース・ドットコムセールスイネーブルメントシニアディレクター————————————————完全版eBookをダウンロード提供中本連載『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』第3章(Vol. 10〜13の記事)は、完全版のeBookにまとめています。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第3章 ダウンロードはこちら 】Vol. 6~9の記事は第2章の内容になります。第2章のeBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第2章 ダウンロードはこちら 】Vol. 1〜5の記事は第1章の内容になります。eBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第1章 ダウンロードはこちら 】連載記事<第1章>Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマVol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織<第2章>Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲームVol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげるVol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ<第3章>Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせVol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニングVol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開<関連セミナーご案内>Salesforceでは、営業改革をサポートするウェブセミナーをご用意しています。あらゆる企業規模・業界において営業マネージャーの方々がどのようにSalesforceを活用すべきかをご紹介します。ぜひご活用ください。https://successjp.salesforce.com/article/NAI-000042
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連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.4
現場が見えなくなる中規模組織前回 vol.3 に続いて、上記のグラフ「営業組織の規模による課題の違い」から伺える示唆について、もう少し細かく見ていきましょう。 「顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない」に次いで多いのは「営業活動の可視化や活動内容のコーチングができていない」です。これは営業組織の人数が増えるごとに大きな問題になっていき、31~50名規模でピークを迎え、その後はなだらかに下がっていっています。SFAを入れるなど何らかの対策をするような51名以上の規模になるまでは、組織が大きくなるごとに混沌としてくる様子が伺えます。その他の規模別の課題その他、特徴的なところは以下になります。・15名までの組織で特徴的な課題・営業部門内で提案書などのノウハウの共有ができていない・資料・見積作成の効率化ができていない16~50名の組織で特徴的な課題・営業活動の可視化や活動内容のコーチングができていない・営業データ全般の分析ができていない・営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない・営業組織の規模が大きくなるごとに値が高くなる課題・部門をまたがった情報共有とコラボレーションができていない営業案件の可視化やコーチングに関する問題意識は、営業組織が50人を超えると少し下がっていく傾向が見られます。先に、営業マネジメント50人の壁の話をしましたが、人数が増えるとともにデータが増加・散在していくので、案件管理のためにもSFAが導入され、案件の可視化に関してはこの段階で対処している企業が多いようです。また、営業活動管理の課題感も50人あたりがピークにあるようです。実際、「営業活動の可視化や活動内容のコーチングができてない」「営業データ全般の分析ができていない」という悩みは、50人まで直線的に上がっていきます。組織が大きくなり、営業メンバーが増加すると、個々の営業担当者が何をしているかがが見えなくなるとともに営業マネージャーのコーチングも課題となってくるのです。これが営業組織50人までの典型的な課題だと思われます。おそらく対処の順番としては、15名までの営業組織では提案書・見積書などのファイルベースで行われる作業ノウハウの共有が課題となり、営業部門にファイルサーバーを導入することや、見積・販売管理システムなどで解決。その後、16~50名の組織では営業の個々の活動と案件管理が課題となり、SFA導入で対応となっていると推察されます。51人以降の組織では、各社によって課題感が異なると思われます。後述しますが、SFAを使いこなせていない企業は、この段階でクリアしておくべき課題を解決できていないために、同じ問題を抱えたまま組織人数が大きくなっている可能性があります。次回は、「SFAを使いこなせていない企業は、どこにつまづいているのか」についてお話していきます。著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)セールスフォース・ドットコムセールスイネーブルメントシニアディレクター————————————————完全版eBookをダウンロード提供中本連載『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』第3章(Vol. 10〜13の記事)は、完全版のeBookにまとめています。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第3章 ダウンロードはこちら 】Vol. 6~9の記事は第2章の内容になります。第2章のeBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第2章 ダウンロードはこちら 】Vol. 1〜5の記事は第1章の内容になります。eBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第1章 ダウンロードはこちら 】連載記事<第1章>Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマVol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」<第2章>Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲームVol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげるVol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ<第3章>Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせVol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニングVol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開<関連セミナーご案内>Salesforceでは、営業改革をサポートするウェブセミナーをご用意しています。あらゆる企業規模・業界において営業マネージャーの方々がどのようにSalesforceを活用すべきかをご紹介します。ぜひご活用ください。https://successjp.salesforce.com/article/NAI-000042
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連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.3
営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用今回は、営業組織の規模による課題の違いを見ていきましょう。課題として、上位3つに挙げられたのが、「顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない」「営業活動の可視化や活動内容のコーチングができない」「営業データ全般の分析できていない」というものです。こちらは複数回答のため、回答いただいた方の何%がその項目にチェックを行ったかという率のグラフで表現しています。例えば、営業組織6~15名の137名の回答者のうち、59.12%(81名)が「顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない」にチェックをつけているという意味になります。顧客データを生かせていない小規模営業組織と大規模営業組織最初に「顧客データを生かした営業活動や効率化ができていない」という回答を見てみましょう。15名までの小規模組織と、401名以上の大規模組織にとっては一番の課題のようです。15名までの小規模組織では、そもそも顧客データの収集・管理を行っていない可能性が高いと思われます。「顧客情報の収集・管理ができていない」の課題意識も401名以上の大規模組織と比べて高く、1つ1つの取引に集中するあまり顧客の情報を整理できていないと思われます。仮に顧客の情報があるとしても企業名と請求先(納品先)のみで、やりとりの詳細はメールボックスの中や個々のPCのファイルの中に存在している状況なのでしょう。これでは次のビジネスを探す際に、複数の顧客の共通した特徴(業種や地域、これまでの取引履歴など)をもとに、自社にとって取引可能性の高い、または利益率の高い顧客を見つけ出すのに時間がかかり、ビジネスが運任せになってしまいます。自社にとって取引可能性の高い企業の特徴がわからないまま、企業データ販売会社のデータを購入したり、テレマーケティング会社に委託したとしても収益への効果は限定されてしまいます。すでに社内には「“受注した”という“正解”」のデータがあるにも関わらず、このデータを生かすことができなければ、見込みのないところに多くの時間をかけてしまう可能性が高くなります。これは収益を目的とする企業にとっては非常にもったいないことです。営業戦略で重要なのは「誰に売るか」であり、ターゲティングがとても重要です。売りたくない相手には売らないくらいの考え方でターゲティングをしないと効率と利益は確保できません。とにかく誰にでも平等に売ろうとする方針の企業もありますが、正当な対価を得るのが難しいにもかかわらず無理をして公平に平等に売る必要はありません。公共の機関ではなく営利企業である以上、利益が確保できる相手に売るのが基本です。この自社データを利用したターゲティングは営業生産性を上げる最も有効な手段ですので、小規模の営業組織にはそこに課題意識があるようです。また、この営業組織人数15名までの回答者の合計203名のなかには、従業員数1,000名以上の企業からも82名の回答がありました。「大企業ではあるが、小規模営業組織の方々」ということです。その中にはITシステム会社、素材メーカーの営業部門、大企業の新規事業と思われる部門の方がいらっしゃいました。上記回答者の組織の中には、これまで特定企業からのビジネスが多くの比率を占めていて顧客情報の収集や、そもそも営業組織自体が必要なかったところもあるでしょう。そのような場合には大企業であろうとこれまで交換した名刺をまとめたり、顧客情報の収集から始めなければなりません。特に大企業の新規事業部門ですが、せっかく大企業の一つの部門にも関わらず、これまでの企業内の情報資産がまとまっていないのか、他部署の情報資産を生かすことができない環境の方もいらっしゃるようです。一方、「顧客データを生かした営業活動や効率化ができていない」課題を抱えている401人以上の大規模営業組織はどうでしょうか。こちらはそれなりにビジネスがうまくいって現在の規模になっているのですから、すでに全国をカバーしていたり海外展開をしている場合が多いと考えられます。そうなると次の市場を探すために、現在の顧客データから有望顧客やホワイトスペースを発見すると同時に、いま顧客や市場が認識していない、つまり顕在化していないニーズを顧客情報から見つけ出す必要があります。他の課題感は比較的低く、営業としてはA製品を購入している企業に追加のB製品を販売するクロスセルや、上位製品に買い換えてもらうアップセルに加えて、失注商談に記録されている顧客が購入しなかった理由から新たな市場ニーズを見つけ出し、新製品や新サービスにつなげていくデータ活用が求められているのではないかと思われます。著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)セールスフォース・ドットコムセールスイネーブルメントシニアディレクター————————————————完全版eBookをダウンロード提供中本連載『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』第3章(Vol. 10〜13の記事)は、完全版のeBookにまとめています。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第3章 ダウンロードはこちら 】Vol. 6~9の記事は第2章の内容になります。第2章のeBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第2章 ダウンロードはこちら 】Vol. 1〜5の記事は第1章の内容になります。eBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第1章 ダウンロードはこちら 】連載記事<第1章>Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマVol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」<第2章>Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲームVol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげるVol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ<第3章>Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせVol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニングVol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開<関連セミナーご案内>Salesforceでは、営業改革をサポートするウェブセミナーをご用意しています。あらゆる企業規模・業界において営業マネージャーの方々がどのようにSalesforceを活用すべきかをご紹介します。ぜひご活用ください。https://successjp.salesforce.com/article/NAI-000042
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連載:『営業改革のコンパス〜規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計〜』vol.2
はじめに営業組織の規模によって課題感はどのように異なるのか営業職業従事者は、2021年3月の総務省統計局の労働力調査結果 で、全就業者数6649万人中321万人(4.8%)の職業です。その中でも法人向けビジネスを行っている(BtoB)企業においては、営業は企業の売上や利益を左右する重要部門であり、全従業員中15~40%ほどの比率を占めます。決して小さな組織ではありませんし、企業内での立場も比較的強いと言われる組織です。この営業組織の規模による課題の違いを把握するためにセールスフォース・ドットコムでは、これまで東洋経済新報社と実施したセミナー参加者に営業部門の実態を把握するための詳細なアンケートを実施してきました。ここでは2018年に開催された「東洋経済新報社主催 営業改革のビジネススクール シリーズ営業改革」合計4回の申込者1,760名(のべ2,219名)のアンケート結果を分析し、読み取れる営業組織の実態についてご紹介したいと思います。営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題ベンチャー企業は成長に伴い、従業員30人の壁、50人の壁に直面すると言われます。これは人数が増えると個々人の状況をトップが把握しにくくなり、意思疎通もうまく図れなくなるため組織の運営で混乱が生じるためです。これは営業組織でも同じであり、営業担当者の人数によって抱える課題が異なり、組織構造、仕組み、マネジメント方法などの変更を考える必要が出てきます。こちらのグラフは営業組織の人数によるSFA導入率の違いです。現在の営業の活動、案件、顧客の管理方法について回答いただいたものを、営業組織の大きさごとに「5名まで」「6〜15名」「16〜30名」「31〜50名」「51〜150名」「151〜400名」「401〜1000名」「1001名以上」の8段階に分けました。分析の過程では、営業組織の大きさの区切りを20名や120名など様々な数字で分けてみましたが、大きな差が見られたのはこれらの数字でした。これらの数字は人間の認知範囲の境目といわれます。5人が親友と呼べる人数、15人がそれなりに仲の良い人たち、50人が仲間や協力者のレベル、150人が顔と名前が一致する認知の上限(「ダンバー数」と呼ばれます)、500人がコミュニケーションのとれる知り合いの数。結果的にこれにほぼ準拠する区切り方になりました。このグラフを見ると、営業組織が50名を超えたあたりからSFAの導入率が上がっているのがわかります。その規模までは半数の企業が「Excelや日報、グループウェア等」で管理していますが、50名を超えるSFAの導入に踏み切っているようです。おそらく管理の限界を迎え、SFAの導入にいたるのではないかと推察されます。50名というのは、企業にとっても営業組織にとっても大きな節目なのかもしれません。確かに営業担当者が少人数であれば紙の日報やExcel、グループウェアなどでなんとなく全体の状況は把握できるでしょう。扱っている製品数も少なく顧客数も少ない場合、管理の煩雑さを決めるのは、ほぼ案件数になります。一人当たり常時5件の案件を扱っているとすると、10人の営業であれば合計50件。そのうち少額リピート案件のような比較的手間のかからないものが80%とすれば、営業責任者は10件の案件を注視すればいいのです。しかし、営業担当者が50人を超えるとそれでは破綻します。50人の営業担当者がそれぞれ最低でも3~5案件を扱う場合、全体で150~250案件が常に動いているからです。組織階層も増えるなかで件数も増加し、各案件の進捗状況を聞きながら適切なアドバイスや行動をとるのは大変です。全体を一目で俯瞰でき、営業責任者が関わらなければならない重要案件10件と、営業マネージャーに任せて良いもの、営業担当者に任せて良いものを判別できる環境が欲しくなるのも理解できます。もちろん現在の案件状況の把握だけでなく、売上予測の数字をまとめるのも一苦労でしょう。製品別など縦割り組織で部署間の交流が少なかったり地域が違っていたりすれば、Excelでデータを集約する作業だけでも大変になります。フォーマットを合わせるために時間がかかり、古い情報のまま共有される場合もあるでしょう。営業会議で「実はこの数字は2週間前のでして、最新の数字だと〜」と修正のコメントで埋まってしまうという事態にもなりかねません。会議の生産性はデータの正確性で決まります。実際、そのような集計の煩雑さを理由としてSFAを導入した企業も存在します。しかし、このような問題を解決するためにSFAを導入したからといって安心はできません。51-400名のゾーンでは、全体の24.28%(SFAを導入した企業の50%近く)が「営業支援システムで管理しているが使いこなせていない」と回答をしています。しかも自社のビジネスにあった形で構築したはずの自社開発の営業支援システムでさえ「使いこなせていない」と回答している比率も上がっています。ただ規模がもう1段階上がり、401名以上のところでは「SFAで管理しているが使いこなせていない」という企業は一定数いるものの、その比率は下がっていることがわかります。ここまでのポイントをまとめます。・営業組織の人数が50名を超えるとSFA導入に踏み切る企業が多くなる・しかし、営業組織の人数が50名を超えSFAを導入しても、約半数が「使いこなせていない」と回答している・401名以上の企業は(何らかの形で)管理できている率が高くなっている営業組織の規模によってSFAの導入率が変化していることはわかりました。では、抱えている課題は営業組織の規模によってどのように異なっているのでしょうか。次回はそのあたりを見ていきましょう。著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)セールスフォース・ドットコムセールスイネーブルメントシニアディレクター————————————————完全版eBookをダウンロード提供中本連載『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』第3章(Vol. 10〜13の記事)は、完全版のeBookにまとめています。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第3章 ダウンロードはこちら 】Vol. 6~9の記事は第2章の内容になります。第2章のeBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第2章 ダウンロードはこちら 】Vol. 1〜5の記事は第1章の内容になります。eBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第1章 ダウンロードはこちら 】連載記事<第1章>Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマVol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」<第2章>Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲームVol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげるVol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ<第3章>Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせVol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニングVol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開<関連セミナーご案内>Salesforceでは、営業改革をサポートするウェブセミナーをご用意しています。あらゆる企業規模・業界において営業マネージャーの方々がどのようにSalesforceを活用すべきかをご紹介します。ぜひご活用ください。https://successjp.salesforce.com/article/NAI-000042
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連載:『営業改革のコンパス〜規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計〜』vol.1
はじめに 営業改革プロジェクトをどのように進めていけばいいのか、どのような障壁が待ち構えているのか——。 本連載は、セールスフォース・ドットコムに在籍して20年近く、たくさんのお客様とお話しし、さまざまな課題に直面、解決してきたセールスイネーブルメント・シニアディレクターの田崎純一郎が、まだまだ経験者の少ない営業改革プロジェクトに関する情報を整理したいと思い、これまでのアンケート結果や営業改革プロジェクトを成し遂げたお客様のインタビューをもとにまとめたものになります。 営業改革プロジェクトを進めるために知っておきたい知識、また押さえておくべきポイント、さらになぜ営業支援システム(SFA)が必要なのかをご紹介していきます。 今も昔も営業の武器は情報です。顧客情報、案件情報、活動情報の3つの情報を制する営業はより効率的に受注を獲得できます。そして21世紀に情報を扱うにはITは欠かせません。現代のビジネスに適合した情報の取り扱いを営業ができるようになれば、この変化の時代を生き抜くことができます。 また、営業改革には終わりがありません。 新しい技術が生まれれば、経済が変わり、世界が変わります。世界が変われば、顧客も変わります。顧客が変われば、営業も変わらなければなりません。 第1章では、営業改革プロジェクトで解決すべき課題を深掘りしていきます。1,760名のアンケート結果からみた現代の営業組織が抱える課題について分析し、第2章では、なぜ営業力を会社の仕組みにしなくてはならないのか。また、どのように営業情報を管理し活用すればよいかについて取り上げます。第3章では、プロジェクトを進める際のポイントについて解説いたします。 ぜひ営業改革プロジェクトを成功に導いてください。営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ 営業改革プロジェクトや営業支援システム(SFA)導入を進める際、多くの方は他社の改革の手法を参考にされると思います。改革の担当者は自社が抱える営業組織の課題や改革テーマと類似している企業を探すために、業種・業態・従業員数・業界内シェア・ビジネスモデルなどさまざまな観点で類似の企業を検索されるでしょう。実際、多くの書籍やインターネット上の記事は業種や規模で企業を分類し、大企業が抱える課題や中小企業特有の解決策、成功事例などを紹介してきました。 しかし、いくつかの記事を見れば気付くでしょう。営業改革の課題や解決策を語る上で出てくるキーワードはほとんどが共通したものです。「属人的な営業」「情報とノウハウの共有」「営業プロセスの標準化」「営業の生産性向上」「SFAの定着化が課題」など、どの記事を見てもあまり違いはありません。 企業規模や業種で分類されてはいるものの、出てくる課題や解決策はどれも同じキーワードです。本当にそうであれば、わざわざ改革の事例を企業規模や業種で探す必要はありません。では、改革の担当者は、自社の参考になる事例をどのような観点で見つければいいのでしょうか? そもそも本当にどんな営業部門も企業規模に関係なく同じ問題を抱えているのでしょうか? 私たちは「営業組織の規模」と「役職」に着目しました。そして、アンケートの分析によっていくつかの発見をしました。営業部門の課題は部門の大きさによって変わる。そして、その解決策の優先順位は役職によって違う。また、改革には順番があり、見積・提案書の共有、案件情報の可視化、そして活動の可視化と顧客データの活用へと進む。複数の営業組織を見てきた方であれば、いたって当たり前の結論かもしれませんが、改革前の営業部門の当事者が、自社の営業組織の課題やステージを客観的に分析することはなかなか難しいことではないかと思い、この連載にまとめました。 営業部門の日々の運営において、営業担当者や営業部門長が直面している課題は「営業組織の大きさ」に密接な関係があります。3階層15人程の営業組織ではなかったような課題が、5階層150人の組織には出てきますし、課題に対する解決策も営業担当者の教育や努力、能力の向上だけではなく、多くの支援部門やITの活用をあわせた方法の重要性が増してきます。 特に大規模組織になればなるほど、仕組みによる底上げとナレッジの再利用の影響力が増します。営業組織内の多数の営業担当者から生まれるデータとそれを生かす営業戦略部門(経営企画、営業企画、営業戦略など)や営業支援部門(マーケティング、インサイドセールス、セールスイネーブルメント、営業推進、業務、セールスエンジニアなど)の力によって、営業の生産性は大きく変わってくるのです。 これらの要素を理解して組織を成長させることができれば、スケールする営業組織を作り出すことができます。残念ながらその仕組みを確立できない場合は、50人ほどの“職人”営業集団が、製品別や地域別に存在し、属人的なやり方に依存する、いわば「中小企業の集合体」としての営業組織になってしまうでしょう。 また、アンケートの分析から、役職(組織上の立場)によっても解決策の優先順位は大きく違うことがわかりました。おそらくこのギャップが「社内の意見がまとまらない原因」であり、プロジェクトの成否を決めるカギにもなるでしょう。営業改革が道半ばで頓挫してしまうのは、組織の上下間での優先順位の違いをそのままにして進めていくことも原因の一つです。トップダウンはトップの意思がダウン(担当者レベルまで浸透)することであり、ボトムアップはボトムの意見をアップ(上層部が納得)させなければせっかくの改革の機運が雲散霧消してしまいます。 これら営業改革のポイントや標準的なステップを理解した上でプロジェクトを進めることで、闇雲に思いついた施策を実施したり、現場と経営者、コンサルタントの板挟みにあいながらプロジェクトを迷走させる確率を大きく減らすことができるのではないかと考えます。企業を成長させるには、製品やサービスだけでなく、営業組織も成長させなければなりません。営業組織の大きさによって直面する課題を理解しておくことで、数年後の次の営業組織へ成長する準備を事前に行っておくことができます。 次回は、営業組織の規模によって課題感はどのように異なるのか、具体的に解説していきます。著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)セールスフォース・ドットコムセールスイネーブルメントシニアディレクター————————————————完全版eBookをダウンロード提供中本連載『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』第3章(Vol. 10〜13の記事)は、完全版のeBookにまとめています。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第3章 ダウンロードはこちら 】Vol. 6~9の記事は第2章の内容になります。第2章のeBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第2章 ダウンロードはこちら 】Vol. 1〜5の記事は第1章の内容になります。eBookにて完全版を公開しております。ぜひ、下記からダウンロードしてお読みください。【 第1章 ダウンロードはこちら 】連載記事<第1章>Vol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」<第2章>Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲームVol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげるVol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ<第3章>Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせVol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニングVol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開<関連セミナーご案内>Salesforceでは、営業改革をサポートするウェブセミナーをご用意しています。あらゆる企業規模・業界において営業マネージャーの方々がどのようにSalesforceを活用すべきかをご紹介します。ぜひご活用ください。https://successjp.salesforce.com/article/NAI-000042
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営業改革に取り組むひとり情シス奮闘記 〜挑戦に必要な3つのスキル 〜
概要新潟発、日本唯一のウェットブラスト装置の専業メーカー、マコー株式会社でIT関連を一手に引き受けている小林 健氏をお迎えし、営業改革に取り組むために必要とされる3つのスキルをご紹介します。また、情シスが営業改革に取り組む理由、導入してみてぶち当たった現実の壁、現状を打破するために取り組んだ施策などもお話しいただきます。開催日:2021/1/1 *開催時点での内容になります。https://play.vidyard.com/yfzAtn65mJbavQ1kUpdv4A参考リソースSalesforce 認定講師によるトレーニング Trailhead Academy
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