連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.3

公開日: 2021.06.28

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営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用

今回は、営業組織の規模による課題の違いを見ていきましょう。課題として、上位3つに挙げられたのが、「顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない」「営業活動の可視化や活動内容のコーチングができない」「営業データ全般の分析できていない」というものです。こちらは複数回答のため、回答いただいた方の何%がその項目にチェックを行ったかという率のグラフで表現しています。例えば、営業組織6~15名の137名の回答者のうち、59.12%(81名)が「顧客データを生かした営業活動の効率化ができていない」にチェックをつけているという意味になります。

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顧客データを生かせていない小規模営業組織と大規模営業組織

最初に「顧客データを生かした営業活動や効率化ができていない」という回答を見てみましょう。15名までの小規模組織と、401名以上の大規模組織にとっては一番の課題のようです。

15名までの小規模組織では、そもそも顧客データの収集・管理を行っていない可能性が高いと思われます。「顧客情報の収集・管理ができていない」の課題意識も401名以上の大規模組織と比べて高く、1つ1つの取引に集中するあまり顧客の情報を整理できていないと思われます。仮に顧客の情報があるとしても企業名と請求先(納品先)のみで、やりとりの詳細はメールボックスの中や個々のPCのファイルの中に存在している状況なのでしょう。これでは次のビジネスを探す際に、複数の顧客の共通した特徴(業種や地域、これまでの取引履歴など)をもとに、自社にとって取引可能性の高い、または利益率の高い顧客を見つけ出すのに時間がかかり、ビジネスが運任せになってしまいます。

自社にとって取引可能性の高い企業の特徴がわからないまま、企業データ販売会社のデータを購入したり、テレマーケティング会社に委託したとしても収益への効果は限定されてしまいます。すでに社内には「“受注した”という“正解”」のデータがあるにも関わらず、このデータを生かすことができなければ、見込みのないところに多くの時間をかけてしまう可能性が高くなります。これは収益を目的とする企業にとっては非常にもったいないことです。営業戦略で重要なのは「誰に売るか」であり、ターゲティングがとても重要です。売りたくない相手には売らないくらいの考え方でターゲティングをしないと効率と利益は確保できません。

とにかく誰にでも平等に売ろうとする方針の企業もありますが、正当な対価を得るのが難しいにもかかわらず無理をして公平に平等に売る必要はありません。公共の機関ではなく営利企業である以上、利益が確保できる相手に売るのが基本です。この自社データを利用したターゲティングは営業生産性を上げる最も有効な手段ですので、小規模の営業組織にはそこに課題意識があるようです。

また、この営業組織人数15名までの回答者の合計203名のなかには、従業員数1,000名以上の企業からも82名の回答がありました。「大企業ではあるが、小規模営業組織の方々」ということです。その中にはITシステム会社、素材メーカーの営業部門、大企業の新規事業と思われる部門の方がいらっしゃいました。

上記回答者の組織の中には、これまで特定企業からのビジネスが多くの比率を占めていて顧客情報の収集や、そもそも営業組織自体が必要なかったところもあるでしょう。そのような場合には大企業であろうとこれまで交換した名刺をまとめたり、顧客情報の収集から始めなければなりません。特に大企業の新規事業部門ですが、せっかく大企業の一つの部門にも関わらず、これまでの企業内の情報資産がまとまっていないのか、他部署の情報資産を生かすことができない環境の方もいらっしゃるようです。

一方、「顧客データを生かした営業活動や効率化ができていない」課題を抱えている401人以上の大規模営業組織はどうでしょうか。

こちらはそれなりにビジネスがうまくいって現在の規模になっているのですから、すでに全国をカバーしていたり海外展開をしている場合が多いと考えられます。そうなると次の市場を探すために、現在の顧客データから有望顧客やホワイトスペースを発見すると同時に、いま顧客や市場が認識していない、つまり顕在化していないニーズを顧客情報から見つけ出す必要があります。他の課題感は比較的低く、営業としてはA製品を購入している企業に追加のB製品を販売するクロスセルや、上位製品に買い換えてもらうアップセルに加えて、失注商談に記録されている顧客が購入しなかった理由から新たな市場ニーズを見つけ出し、新製品や新サービスにつなげていくデータ活用が求められているのではないかと思われます。

著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)

セールスフォース・ドットコム

セールスイネーブルメントシニアディレクター

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連載記事

<第1章>

Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ

Vol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題

Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織

Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」

<第2章>

Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲーム

Vol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化

Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげる

Vol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ

<第3章>

Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?

Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ

Vol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニング

Vol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開

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公開日: 2021.06.28

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