連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.11

公開日: 2021.11.11

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前回Vol. 10 に続いて、上記の図「営業改革プロジェクトの標準的なプロセス」からステップ2 チーム結成・メンバーの選定以降を解説していきます。

ステップ2 チームの結成・メンバーの選定 

「営業が強い」とされる組織であればあるほど、経営者や営業担当役員など上層部が強い意志を持って、オーナーとして関与しない限り、改革をやり遂げられません。実際、「営業改革を実施する」と号令を発するプロジェクト・オーナーは、経営トップや役員が多いようです。

その後、多くの企業では経営企画部や営業推進部からプロジェクト・リーダーやメンバーが選出され、プロジェクト・チームが作られます。メンバーは専任で選ばれる場合もあれば、兼任の場合もあります。理想的なのはメンバーがプロジェクトに専念できる形ですが、コアメンバーでない限り、兼任メンバーとして各部門長やリーダーが集まり、営業改革の具体的な方向性を議論し、現場浸透を推進する役割を担うことが多いのが実態です。

営業改革のコアメンバーは5名ほどで、10名を超える企業はまれです。なお、兼任者がプロジェクトにかけている工数は、だいたい1週間に6時間程度(2時間×3日、もしくは3時間×2日)で、数カ月続けることが多いようです。この中で、営業業務の調査・整理、営業プロセスの作成やフェーズの定義、トレーニング計画の立案などをおこなっています。

では、具体的にどのような人物がチーム・メンバーに選定されているのでしょうか。プロジェクトや営業現場の経験があるか、ITリテラシーや分析能力はどうかなど、さまざまな選定基準が考えられますが、多数のプロジェクトを見る中で、成功している事例には次のような特徴が見られました。

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まず、プロジェクト・リーダーですが、力強く周囲を巻き込んでいくタイプ、淡々と仕事を進めるタイプ、現場に積極的に出ていくタイプ、メンバーの後ろで見守るタイプなど、リーダーシップスタイルそのものは千差万別でした。ただ、共通するのは「絶対に成功させるんだ」という熱い思いを持ち、ブレない強さを持っていること。

どのプロジェクト・リーダーも、現場の反発やITシステムのトラブルなどの諸問題に直面したときに、メンバー任せにするといった中途半端な対応をとらず、日々現場で顧客を相手に頑張っている営業担当者の立場で考え、優先順位を決めて行動していました。

ステップ3 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ

プロジェクトの重要なポイントとなるのが、「方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ」です。ここがまさに改革方針の決定段階であり、営業改革をすることで、「具体的にどのような営業スタイルになるのか」「これまでできなかった何が実現できるようになるのか」「自分たちにどのようなメリットがあるのか」を明確にしていきます。

改革方針は企業の置かれた状況によって大きく変わってくるでしょう。プロジェクト発足のきっかけは似たようなものであったとしても、改革の方針や道筋は企業によってさまざまだと思います。

基本的な「見える化」と呼ばれる営業現場の透明性の確保については、どの企業も最初にあたりまえのように出てくるキーワードですが、業界内の順位、顧客からの評価、ビジネスモデル、自社特有の営業風土やこれまでの取り組みの歴史によってその後のアプローチは変わってきます。

自社の営業はどうあるべきなのか、そのために必要なスキルはなんなのか、数年後の自社の営業像をすり合わせます。まさに新たな営業部門の「価値観」が決められる段階です。

この段階で行ういくつかの施策をご紹介します。

・顧客インタビュー

改革の方向性のヒントは顧客にあります。これまで長期にわたって取引をしていただいている顧客や、つい最近取引を開始していただいた顧客、逆に離れてしまった顧客などに、「なぜ自社を選んだのか」「改善点はどこか」「営業に求めることはどのようなところがあるのか」をヒアリングしていきます。

・営業現場のインタビューと業務調査

営業現場のインタビューと業務調査の目的は大きく2つ。「業務の実態を把握し、改善点を見つけること」で現在の営業担当者やマネージャーの業務を実態調査、改善策につなげる。「現場のリーダーを見つけること」で改革を進めていく中で力になってくれる候補をリストアップしていきます。

・ビジョン設定を目的としたワークショップ

顧客インタビューや営業現場のインタビューと業務調査の後は、あるべき営業の姿や新しい業務フローなどを作る過程に入ります。この段階で現場を巻き込んだワークショップ形式で新しいアイデアを集めることをお勧めいたします。

ワークショップにはたくさんのやり方がありますが、ここでは重要と思われるワークショップをご紹介します。

:カスタマージャーニーマップワークショップ

顧客視点で自社のWebサイトや提案書を見てみると、改善すべき顧客との接点や、スピード感が足りない所などがわかります。営業として顧客に対面する前の段階で、顧客はどのように自社を見ているのかをあらためて見直すきっかけにもなるでしょう。

ワークショップ2:営業プロセスの標準化、フェーズ作成ワークショップ

顧客の立場になって自社を見つめた後は、自社の業務フローや営業プロセスについて考えます。「新規顧客と既存顧客」「直接販売と間接販売」などで考慮すべき点があれば、そのフローや注意点を書き出します。その上で案件のフェーズと確認項目を決めます。その内容は営業マニュアルを作成する際に活用し、ある程度の期間実行した後に現場の意見を反映しながら修正していきます。

ワークショップ3:KPIダッシュボード作成ワークショップ

営業部門が新しい営業スタイルを実行し、きちんと結果に結びついているかを確認するのがダッシュボードです。いわゆる分析ツールで、経営者向け、営業マネージャー向け、営業担当者向けなどに最適化することができ、目標の達成状況や、抜け漏れなどを確認することが可能になります。

・営業の業務整理、ルールの作成、その他

ワークショップの結果を反映した業務フロー図の作成を行います。最終的に、「営業がやるべき仕事とそうでない仕事」「新しい組織構成」などにも踏み込む必要があるでしょう。事例で取り上げた企業では、かなりの割合でこの業務整理を行い、営業から事務作業を減らし、顧客への時間を増やしていました。

次回は、営業改革プロジェクト ステップ④情報プラットフォーム(ITシステム)選定以降について解説していきます。

公開は10/18(木)を予定しております。

著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)

セールスフォース・ドットコム

セールスイネーブルメントシニアディレクター

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連載記事

<第1章>
Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ

Vol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題

Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用

Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織

Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」

<第2章>

Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲーム

Vol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化

Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげる

Vol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ

<第3章>

Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?

Vol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニング

Vol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開

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公開日: 2021.11.11

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