連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.13
公開日: 2021.11.25
Vol. 10 、Vol. 11、Vol. 12に続いて、上記の図「営業改革プロジェクトの標準的なプロセス」からステップ6 KPI、データ分析と活用以降を解説していきます。
ステップ6 KPI、データ分析と活用
データが蓄積されてくると、分析とその結果を踏まえたアドバイスが可能になります。この時点で、目的や改革方針に沿って決めたKPIの評価や見直しを行いながら、PDCAサイクルを回していきます。
この段階で見直しが必要なことがわかれば、ステップ3 に戻り、修正してITに適用し、再度トレーニングを行います。
実際、初期はスピード重視でSFAの標準機能に合わせて営業プロセスを作成したものの、現場で使っていくうちにより実態に合ったプロセスを作り上げ、画面を追加でデザインし、開発・実装した企業もありました。逆に、最初に入力項目を作り過ぎたため、運用が回らず大幅に項目を見直すことを行った企業もありました。
いずれにしても営業改革は最初から正解が分かっている改革ではありません。よって、半年から1年のサイクルで、ステップ3「方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ」から、ステップ6「KPI、データ分析と活用」を繰り返すことで、より改革は効果を発揮し結果へと結びついていきます。
また、営業活動プロジェクトでよく行われるのが、優秀な営業担当者のノウハウを形式知化し、全社に展開して底上げを図ろうとする試みです。顧客訪問の回数や頻度、訪問する相手、活動ステージ、見積提示のタイミング、取得する情報、事務確認、目的達成度合いなど、あらゆる観点から活動を分析し、成績上位者と他の営業担当者を比較し、違いを見ていくと、最も営業成績に直結する要素が明らかになります。
このような分析とナレッジの標準化や展開は、営業戦略部門や営業支援部門の役割と考えます。客観的な視点で営業活動の特徴をつかみ、製品特性や地域特性などに合わせてカスタマイズし、すべての営業担当者が実践できるように標準化していきます。
こうした営業担当者の行動分析、売上予測などは、システムを入れたからといって、一夜にして可能になるわけではありません。どの順番で何をすべきか、それによって何ができるかを理解し、段階的に積み上げていくことが大切です。
ステップ7 定着化と展開
改革を進めていくには、小さな成功が必要です。それをきっかけに、現場担当者や経営者、プロジェクト・チームの間で一気に活動に盛り上がることもあります。
新しいプロセスややり方で上手く回り始めると、営業生産性の向上、機会損失の抑制、情報共有スピードの向上、部門間の連携促進、会議の質の向上といったメリットが見られるようになります。ただし、それが現場レベルまで定着するまでには、長い時間がかかります。成功事例を見ても、営業の動き方が変わり、効果を実感するには1年以上かかるプロジェクトも珍しくありません。粘り強く取り組んでいくことが大切です。
その間、プロジェクト・チームは辛抱の時間を過ごします。しつこく、熱く、丁寧に営業現場と向き合ってください。プロジェクトに対して反応がよくわからない営業担当者もたくさんいると思いますが、実は「様子見」をしているのです。
「真似しやすい」例をあげ、「勝ち馬」に乗りやすい環境を整えてください。小さな成功が出たら、ぜひ積極的に社内広報活動を行っていただければと思います。社内報、営業会議、全社会議など誰もが見るところで表彰、共有を行うことで「あれは勝ち馬だ」と営業担当者は理解します。その結果、現場への浸透がますます進み、当初のプロジェクト目的が達成されるのです。
誰もが「勝ち馬」に乗りたいのです。ただ、それが勝ち馬かどうかわからないと大きく踏み込めません。積極的にプロジェクト・オーナーの協力を仰ぎ、どのような使い方が良い使い方かを広めましょう。
新しいプロセスや行動様式が定着し、必要なデータが蓄積され活用可能になることで、新たな発想ができるようになります。海外展開、サポート部門との連携強化、インサイドセールスの導入、営業とマーケティングの連動など、次なる展開に移れるのです。これについては多くの事例が存在しますし、セールスフォース・ドットコムも実践しています。ぜひ社員に聞いてみていただければと思います。
著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)
セールスフォース・ドットコム
セールスイネーブルメントシニアディレクター
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連載記事
<第1章>
Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ
Vol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題
Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用
Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織
Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」
<第2章>
Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲーム
Vol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化
Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげる
Vol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ
<第3章>
Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?
Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ
Vol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニング
<関連セミナーご案内>
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公開日: 2021.11.25
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