連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.12

公開日: 2021.11.18

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Vol. 10Vol. 11に続いて、上記の図「営業改革プロジェクトの標準的なプロセス」から、ステップ4 情報プラットフォーム(ITシステム)選定以降を解説していきます。

ステップ4 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 

ITシステム選定のキーワードは「顧客情報・営業情報の統合」です。「簡単に使える」「最初は安いもので」など、誤魔化しのワードに惑わされてはいけません。

今日、ITを使わない企業活動は皆無です。どれほど紙文化だと自認している企業でも、ほとんどの営業担当者は顧客とのやりとりには電子メールを用い、初回訪問では電車の乗り換えルートを検索し、スマートフォンの地図アプリを使って場所を確認しています。日常生活においてスマートフォンやゲームアプリ、LINEやTwitter、Facebook、インスタグラムといった便利なコミュニケーションツールを使っている方もいらっしゃるでしょう。Facebookは日本国内のユーザーの60%以上が40歳以上と言われています。

顧客とのやり取りにこのようなツールを使うのはもはや一般的な時代です。 2020年には多くの会社員がZoomやTeamsの使い方を勉強し、活用できるようになりました。やればできるのです。営業担当者やマネージャーがITツールを使えるかどうかでいうと「使える」のです。

このようなデジタル化の流れがある一方で、日本の営業現場では、営業活動のシステム化やデータ活用が遅れていると言われています。もちろん、ITをまったく用いていないということではありません。先ほど申し上げたようにどの企業でも、見積システム、発注システム、メールによる日報・週報、Excelを使った売上予測と集計作業など、デジタルデータは一通り用いているのにです。

問題はどこにあるのか。それはそれぞれのツールやデータが分断されていることにあります。営業活動はさまざまな活動で成り立っており、必要な知識や業務の広さは多岐にわたります。それにもかかわらず営業活動を支えるITツールはバラバラに存在しているのです。

SFAを導入したとしても、断片的に存在する情報を営業担当者が別途Excelなどを使ってまとめなければならなかったり、頭の中で情報を関連づけたりしなくてはならない状況では、いつまでたっても営業の生産性は上がりません。

カスタマージャーニーの最初から最後までを一気通貫で可視化できるからこそ、営業のやるべきことが明確化し、生産性が上がるのです。

現場のITリテラシーが心配なお気持ちは大変よくわかりますが、ここは現場を信じて、IT化を進めていただきたいと思います。注意すべきは簡単な個別最適のITを選択するのではなく、営業業務全体をサポートできるITを選択すべきだということです。

ステップ5 組織変更の実施、教育・社内トレーニング

新しい営業スタイル、営業組織、ITシステムなどを現場に浸透させるステップです。単に操作方法の説明ではなく、ツールを用いて何を実現したいのかという目的を明確にし、腹落ちさせることが重要になります。

トレーニングのやり方と内容にはいくつか注意点があります。

1つ目は、「すべての現場にプロジェクト・メンバーが直接説明に行くこと」です。できれば、プロジェクト・オーナーかリーダーから「この改革をなぜやるのか」「新しい営業スタイルとはどんなものなのか」「この新しい組織の役割は何か」など、現場の営業担当者が納得するまで、時間をかけて直接話していただきたいと思います。

実際、改革に成功している企業では、プロジェクト・リーダーやコアメンバーが手分けをして、数ヶ月かけて日本全国を回っていました。現場からの質問にも真摯に答えることで、この改革は本気なんだと伝える段階なのです。

2つ目は「各ポジションに合わせたトレーニング」です。営業マネージャーが「見るべきポイント」「コーチングのやり方」「ITツールを使ったときに見えるようになる情報とその関連性」、営業担当者が理解すべき「新しい営業プロセス」「フェーズとその意味」「入力すべき情報」など、情報の生かし方は役割によって異なります。

データを活かした営業マネジメントを行う上で重要な考え方とその理由を説明し、単なるITツールの操作説明会にならないようにしましょう。

3つ目は、「質問やトラブルへの準備」です。IT導入時には質問やトラブルがつきものです。操作マニュアルを作成したり、ヘルプデスクなどでいつでも問合せに対応できる営業サポート体制を整備しておきましょう。情報共有ツールをうまく活用して、他の営業担当者の質問やそれに対する解答を全員が閲覧できるようにすれば、同じような悩みを持つ人の問題が速やかに解消され、質問の重複などの無駄を省くことができます。

改革の目的・目標を明らかにするとともに、新しい営業スタイルにはどのようなメリットがあるのか。自分の活動にどう跳ね返って来るのかを腹落ちさせるのです。また、上層部を味方につけて促進するためのメッセージを発信してもらう、社内のベストプラクティスをまとめ、対象者を賞賛するなど、定着に向けた啓蒙活動を地道に続けます。

例外を設けずに、データ入力を徹底することで、個々人の営業活動に役立つアドバイスがもらえる、相互にコミュニケーションがとりやすくなるといった具体的な成果を示すことが、一番納得感を引き出せるやり方ではないかと思います。

情報が溜まれば、「入力する情報」より「得る情報」のほうが多くなります。インターネットと同じで、得る情報が多くなれば自然と活用頻度も上がってきます。

次回は、営業改革プロジェクト ステップ6 KPI、データ分析と活用以降について解説していきます。

公開は11/25(木)を予定しております。

著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)

セールスフォース・ドットコム

セールスイネーブルメントシニアディレクター

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連載記事

<第1章>
Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ

Vol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題

Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用

Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織

Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」

<第2章>

Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲーム

Vol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化

Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげる

Vol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ

<第3章>

Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?

Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ

Vol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開

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公開日: 2021.11.18

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