連載:『営業改革のコンパス~規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計~』vol.10

2021.11.04

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営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?

営業改革であっても新製品開発であっても、プロジェクトというものは組織のなかで日常業務とは異なる特別なことを行うものです。多くの場合、プロジェクト・メンバーの中にその経験者は存在せず、複数の部門からプロジェクト担当者が臨時に集まって構成されます。プロジェクトによっては、専任担当者もいれば兼任担当者も存在し、モチベーションや認識、優先順位に違いも少なからず発生します。

その中でもステークホルダーが多く、社内でもひときわ声の大きく、往々にして強い立場にある営業部門の改革を行おうというのが営業改革プロジェクトです。「いまの営業部門にいったい何の問題があるんだ」「もっとインセンティブを増やすか、営業経費の枠を大きくしてくれれば、結果は出せる」と、従来のやり方を変えることへの抵抗感もひときわ強くなるでしょう。

それでも改革をやり遂げるには、営業に関する既存の枠組みを理解し、不要な慣習を壊し、新しい営業の枠組みを作り、現場の担当者に納得してもらい、新しい働き方を浸透させるという長い道のりであることを覚悟しなくてはなりません。

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営業改革は通常、以下のステップで進みます。

ステップ1 プロジェクトの発足とゴール・ビジョンの設定

ステップ2 チームの結成、チーム・メンバーの選定

ステップ3 改革方針・内容の決定、業務の標準化とKPIの設定

ステップ4 実現のための情報プラットフォーム(ITシステム)の選定

ステップ5 社内教育トレーニングの企画・パイロットの実施

ステップ6 KPI見直し・チューニング

ステップ7 定着化・展開

実際に営業改革を行った企業も概ね同じような形で改革に取り組んでいます。その過程ではさまざまな困難に直面しますが、この章では、特にポイントとなる要素について説明したいと思います。それを念頭に置いて、改革の事例を見ていくと、各企業がどのような状況に置かれ、どのような工夫をしたのかが把握しやすくなるでしょう。

まず、「プロジェクトの発足とゴール・ビジョンの設定」について解説していきましょう。

ステップ1 プロジェクトの発足とゴール・ビジョンの設定 

「今のままでは以前のように売れないし、営業担当者が疲弊するばかり。何かしなくてはいけない」という危機感を抱きつつも、営業改革プロジェクトの開始にまでなかなかこぎつけられない。「何をきっかけに、プロジェクトを発足させればよいのか」と、悩んでいる方も多くいらっしゃると思います。

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こちらのグラフは営業改革にある程度の関心を持ちセミナーに申し込まれた1,476人のアンケート結果です。

営業改革を行う上でどのような情報を求めているかを聞いたところ、「営業改革プロジェクト発足のきっかけ、ビジョンとゴール」と「分析、KPIと日々のオペレーション」に回答が多く見られました。

営業改革プロジェクトのきっかけに悩んでいらっしゃる企業担当者はかなりの割合です。自身は危機感を持っているが、なかなか周囲の理解を得られない。これまでのやり方を変えなくてはならないけれども、具体的に何から手を付け、どのように進めていけばよいのかわからない……。そのような気持ちが透けて見える結果です。

多くの場合、営業改革プロジェクトが発足するのは自社にとってインパクトのある、何らかの出来事が契機となります。たとえば、M&Aを行い、買収した企業とのシナジー効果を出すために、営業プロセスを統一する必要が出た。あるいは、経営者や事業責任者が交代し、これまでとは違うマーケットに展開することが決まったので、関連する営業戦略や販売プロセス、代理店施策に変更を加えなくてはならなくなった。

このように何らかの新しい状況が生まれ、経営者が問題意識を持ったり、機会や脅威を見出すなどして、改革の号令が発せられます。

実際、社内でも強い立場にある営業部門を改革するのは、トップダウンで始まることが多いようですが、一部には、新たな状況に危機感を抱いたマネージャーなどの有志が上層部に働きかけ、企業全体に広げていくこともあります。こうしたボトムアップ型のときには有力な後ろ盾(社長、役員、営業部門長など)に十分な根回しを行い、改革の内容、進め方などを十分理解し納得してもらい、援護射撃をしてくれる状況をつくることが重要になります。ここで大切なのは、トップ “ダウン”にしても、ボトム“アップ”にしても、きちんと上層部(トップ)と現場(ボトム)が危機感を共有することです。

次に営業改革プロジェクトのビジョンや目指すべきゴールについて考えてみましょう。

どのようなプロジェクトであっても、目指すべきビジョンやゴールがなければ改革への抵抗に負け、空中分解する可能性があります。営業のビジョンを決め、何をもって営業改革プロジェクトの成功とするのか。それを決めないことにはプロジェクトにはならないと考えられます。「2年以内に売上を30%上げる」「新しいデータに基づいた営業スタイルを確立する」「分業体制を確立し、インサイドセールスチームが作成する案件数を全体の25%以上にする」など、営業改革プロジェクトにはビジョンやゴールが必要です。

ただ、実際に営業改革を行なった企業に取材をしてみると、具体的な数値目標を掲げプロジェクトをスタートした企業はそれほど多くはありませんでした。ステップ3「方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ」のパートでイメージ作りが行われるなど、プロジェクトを進めながら決めていく企業がほとんどでした。またそこでも数値は出さず、まずは新しいやり方に変えて、その後どの数値を改善していくかを決めるやり方を行っている企業もありました。

これは、数値は無くてもいいということではないと思います。これまでのやり方で各種数値が計測されていない場合、新しい目標数値が適正かどうかこの時点ではわかりません。この段階で無理して数値目標を決めるよりも、まずは営業活動を可視化し、現状の数値を正しく計測するところから始めるという方針なのだと思います。

また、会社の文化として「日々改善」といったものがあれば、「常に改善していく」という意識が全社員に根付いていますので、わざわざ目標数値を設けるのではなく、これからの方向性を示すことでどこに向かって改善していけばいいかがわかり、具体的な改革が進むようになるのではないかと感じました。

次回は、営業改革プロジェクト ステップ2 チームの結成・メンバーの選定以降について解説していきます。

公開は11/11(木)を予定しております。

著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)

セールスフォース・ドットコム

セールスイネーブルメントシニアディレクター

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連載記事

<第1章>
Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ

Vol. 2 営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題

Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用

Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織

Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」

<第2章>

Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲーム

Vol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化

Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげる

Vol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ

<第3章>

Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ

Vol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニング

Vol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開

<関連セミナーご案内>

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2021.11.04

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