連載:『営業改革のコンパス〜規模に応じたトランスフォーメーションの最適設計〜』vol.2

公開日: 2021.06.17

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はじめに

営業組織の規模によって課題感はどのように異なるのか

営業職業従事者は、2021年3月の総務省統計局の労働力調査結果 で、全就業者数6649万人中321万人(4.8%)の職業です。
その中でも法人向けビジネスを行っている(BtoB)企業においては、営業は企業の売上や利益を左右する重要部門であり、全従業員中15~40%ほどの比率を占めます。決して小さな組織ではありませんし、企業内での立場も比較的強いと言われる組織です。

この営業組織の規模による課題の違いを把握するためにセールスフォース・ドットコムでは、これまで東洋経済新報社と実施したセミナー参加者に営業部門の実態を把握するための詳細なアンケートを実施してきました。
ここでは2018年に開催された「東洋経済新報社主催 営業改革のビジネススクール シリーズ営業改革」合計4回の申込者1,760名(のべ2,219名)のアンケート結果を分析し、読み取れる営業組織の実態についてご紹介したいと思います。

営業マネジメント50人の壁 ― 営業支援システムの導入率からみる営業組織の課題

ベンチャー企業は成長に伴い、従業員30人の壁、50人の壁に直面すると言われます。これは人数が増えると個々人の状況をトップが把握しにくくなり、意思疎通もうまく図れなくなるため組織の運営で混乱が生じるためです。これは営業組織でも同じであり、営業担当者の人数によって抱える課題が異なり、組織構造、仕組み、マネジメント方法などの変更を考える必要が出てきます。

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こちらのグラフは営業組織の人数によるSFA導入率の違いです。現在の営業の活動、案件、顧客の管理方法について回答いただいたものを、営業組織の大きさごとに「5名まで」「6〜15名」「16〜30名」「31〜50名」「51〜150名」「151〜400名」「401〜1000名」「1001名以上」の8段階に分けました。分析の過程では、営業組織の大きさの区切りを20名や120名など様々な数字で分けてみましたが、大きな差が見られたのはこれらの数字でした。

これらの数字は人間の認知範囲の境目といわれます。5人が親友と呼べる人数、15人がそれなりに仲の良い人たち、50人が仲間や協力者のレベル、150人が顔と名前が一致する認知の上限(「ダンバー数」と呼ばれます)、500人がコミュニケーションのとれる知り合いの数。結果的にこれにほぼ準拠する区切り方になりました。

このグラフを見ると、営業組織が50名を超えたあたりからSFAの導入率が上がっているのがわかります。その規模までは半数の企業が「Excelや日報、グループウェア等」で管理していますが、50名を超えるSFAの導入に踏み切っているようです。おそらく管理の限界を迎え、SFAの導入にいたるのではないかと推察されます。

50名というのは、企業にとっても営業組織にとっても大きな節目なのかもしれません。確かに営業担当者が少人数であれば紙の日報やExcel、グループウェアなどでなんとなく全体の状況は把握できるでしょう。扱っている製品数も少なく顧客数も少ない場合、管理の煩雑さを決めるのは、ほぼ案件数になります。一人当たり常時5件の案件を扱っているとすると、10人の営業であれば合計50件。そのうち少額リピート案件のような比較的手間のかからないものが80%とすれば、営業責任者は10件の案件を注視すればいいのです。

しかし、営業担当者が50人を超えるとそれでは破綻します。50人の営業担当者がそれぞれ最低でも3~5案件を扱う場合、全体で150~250案件が常に動いているからです。組織階層も増えるなかで件数も増加し、各案件の進捗状況を聞きながら適切なアドバイスや行動をとるのは大変です。全体を一目で俯瞰でき、営業責任者が関わらなければならない重要案件10件と、営業マネージャーに任せて良いもの、営業担当者に任せて良いものを判別できる環境が欲しくなるのも理解できます。

もちろん現在の案件状況の把握だけでなく、売上予測の数字をまとめるのも一苦労でしょう。製品別など縦割り組織で部署間の交流が少なかったり地域が違っていたりすれば、Excelでデータを集約する作業だけでも大変になります。フォーマットを合わせるために時間がかかり、古い情報のまま共有される場合もあるでしょう。営業会議で「実はこの数字は2週間前のでして、最新の数字だと〜」と修正のコメントで埋まってしまうという事態にもなりかねません。会議の生産性はデータの正確性で決まります。実際、そのような集計の煩雑さを理由としてSFAを導入した企業も存在します。

しかし、このような問題を解決するためにSFAを導入したからといって安心はできません。51-400名のゾーンでは、全体の24.28%(SFAを導入した企業の50%近く)が「営業支援システムで管理しているが使いこなせていない」と回答をしています。しかも自社のビジネスにあった形で構築したはずの自社開発の営業支援システムでさえ「使いこなせていない」と回答している比率も上がっています。ただ規模がもう1段階上がり、401名以上のところでは「SFAで管理しているが使いこなせていない」という企業は一定数いるものの、その比率は下がっていることがわかります。

ここまでのポイントをまとめます。

・営業組織の人数が50名を超えるとSFA導入に踏み切る企業が多くなる

・しかし、営業組織の人数が50名を超えSFAを導入しても、約半数が「使いこなせていない」と回答している

・401名以上の企業は(何らかの形で)管理できている率が高くなっている

営業組織の規模によってSFAの導入率が変化していることはわかりました。では、抱えている課題は営業組織の規模によってどのように異なっているのでしょうか。次回はそのあたりを見ていきましょう。

著者:田崎純一郎(たさき じゅんいちろう)

セールスフォース・ドットコム

セールスイネーブルメントシニアディレクター

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連載記事

<第1章>

Vol. 1 営業改革で解決したい課題は何か - 営業組織の規模と営業改革テーマ

Vol. 3 営業組織の規模によって異なる課題感 ― データの収集と活用

Vol. 4 現場が見えなくなる中規模組織

Vol. 5 使いこなせていない51名以上の営業組織は「営業案件の可視化やパイプライン管理ができていない」

<第2章>

Vol. 6 営業活動は不完全情報ゲーム

Vol. 7 営業を“群衆”ではなく“組織”に -情報を使って160時間の使い方を最適化

Vol. 8 営業情報は製品中心ではなく「顧客データを中心」にフロントとバックをつなげる

Vol. 9 作ったものを売る営業から、売れるものを作る会社へ

<第3章>

Vol. 10 営業改革プロジェクトでは、どんな困難に直面するのか?

Vol. 11 チームの結成・メンバーの選定 ~ 方針決定、ビジョンやゴールの設定、価値観のすり合わせ

Vol. 12 情報プラットフォーム(ITシステム)選定 ~ 組織変更の実施、教育・社内トレーニング

Vol. 13 KPI、データ分析と活用 ~ 定着化と展開

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